子どもの解放、親の地獄——アメリカの夏休み
アメリカの夏休みは、約11週間ある。長い。
子どもにとっては解放の季節でも、働く親からすると、それはそのまま「11週間、子どもをどこに預けるか」という問題になる。家にずっといられても、こちらは仕事ができない。一日中うろうろされたり、ゲームを延々とやられたりしても困る。だから、夏をどう埋めるかの計画は、年が明けた頃にはもう始まっている。
人気のあるところは、すぐに埋まる。早く動かないと枠が取れない。
そして、安くない。市やコミュニティがやっているプログラムは、昔ながらの学童みたいな雰囲気で、週100〜200ドルくらい。一般の子ども向けの習い事系の施設だと、だいたい9時から3時で、週500ドル以上は当たり前。半日のところでも週300ドル近い。これが毎週となると、旅行で抜ける週を入れなくても、ひと夏で3000ドルは優に超えていく。ちなみにこの金額は私の住んでいる地域での話で、都市部だとさらに高くなるはずだ。
お金と一緒についてくるのが、送り迎えだ。
預け先がいつも家から近いとは限らない。高速で片道30分、行きと帰りの往復を足すと、その分だけ一日の時間が消えていく。だから仕事は、時間の融通がきくものでないと、そもそも回らない。とくに片親だと、ここがきつい。時間にうるさい仕事だと、預け先は「本当に丸一日見てくれるところ」に限られてくるし、その分アフターアワーの追加料金も乗ってくる。
とくに、発達障害のある子は難しい。
息子が少し小さかった頃は、IEPの中で「夏のあいだも通う必要のある子かどうか」の判断があって、対象になると2〜3週間ほど無料で通うことができた。お財布にも、療育の面でも、ありがたかった。でも、ある程度大きくなって、それなりのことができるようになり、対象から外れると、今度はこれが難しくなる。普通のキャンプに入れても、慣れなくて癇癪を起こしたり、お友だちとトラブルになったり、何度か呼び出されることもあった。
ただ、子どもの側から見れば、この期間は悪くないとも思う。
学校がある時期にはできない体験が、いろいろできる。宿題はゼロ。その自由さゆえに、ここでも結構、環境に左右される気がする。ある子はゲーム三昧、ある子は専門のキャンプでトレーニング漬け、ある子はやったことのないことに挑戦する。本当にいろいろだ。
この長い夏をどう過ごすか、自分の時間をどう使うか。それは案外、大人になってからの時間の使い方の予行演習みたいなものなのかもしれない、と思ったりする。